AM7:20

シェラトンまでいく。
玄関まえ、車よせの1番先に、オレンジがかった
アルマンダインの、220のコピーが停まってる。
街で見かけるのはせいぜい3色な、このモデルで
ヘタしたら下取りの際、数10万は査定の下がる
こんな色を、わざわざ買うとは…
とあきれてたら、やはりK美んちの車だった。
ほぼ10年ぶりに、それも未婚の幼なじみの姿を
拝むのは、板子下の深遠を覗くこころ持ちである。
鯉のように諦めて、じっとステアリングを握って
フロントガラスを雨粒が、つたってくのを追った。
ところがいつまでたっても、なんもおきない。
横目でちらっと見やると、なんとこの女は10M
むこうの、回転ドア横からガラス越しにこちらへ
顔むけたまま、ぜんぜん気づかずにいるのだった。
どうりで2年ごとにカタログをゆびさして好きな
色で車をえらんでばかりいると、誰かが10年間
おなじ車に乗り続ける。などということはもはや
想像もつかない、遠い世界のできごとなのだろう。
今や日本で最も憎まれてる会社の重役の娘てのは
どれほど毎日、しあわせな気持ちで過ごせるのか。
ちょっと訊いてみたい感じもしたけど、やめとく。
だいたい知らないかもしれないし、教えたとこで
どうなる問題でもない。
私ではなく誰か、勇気ある者が説けばよいのだ。
それにしても、世の中を逆恨みして暴れる余裕が
あるなんて、つくづく秋葉原の彼が羨ましい。
ばれないうちにそろそろと車を出し、逃げ帰る。
もしかするとばれてたかもしれない。



そのまま第3京浜で、車検の手続き。
工場のジャッキで上がってるのは、ちょうど今回
やろうと思ってる、ヘッドまわりを分解整備中の
紺色の140である。
おそらくはこの104搭載で、うちの車と重さが
おなじくらいなはず。
アメリカの部品屋で36の、それもAMGでない
社外のカムシャフトを発見($500)した話を
すると、それは純正より安いのではないかと言う。
とはいうもののこれ以上、高速型にしても意味が
ないので見送り。
来年予定の屋根まわりについてうちあわせ。
まだ、ネットのどこでも見かけたことがないので
書いとく。
パーツ番号が変更になって、さらにはクオーター
内部に左右、追加でプレート状のものが入ってる。
間違いなく改善部品あつかい。
しかしアメリカやドイツにある、いわゆる幌屋へ
現在まで問い合わせたかぎりでは、はっきりした
答えがかえってきてない。
プレートそのものは6000円くらい。
屋根をあける際、たしかリアウインドーの1部が
生地と干渉し、ここから雨が漏ってくる。
ドイツで売ってる中古にも「お約束の」と記載が
あるくらいだから、修正かけてきてるはず。だが
1)番号変更が、形状の変更ゆえなのか
2)その場合、社外が既にそれに対応してるのか
3)プレートとあわせ、改造がきくのか
これらがまだ、はっきりしない。追加で調べる。
つづいて年末まで直してた、機械式5速について。
正確にはこれは機械式4速+レイコックのような
オーバードライブである。
4速はキックダウン、オーバーロードスイッチの
2つとも、ミッションの外側についてる。そして
こっからATFが漏る。
5速はオーバーロードが211のように中に移動。
よって外部に記してある番号で検索しても出ない。
ATF漏れ修理の場合、接続部のOリング交換を
まず試す。リングだけ発注できる。
ということは反対に、例えばATFが規定を超え
圧がかかったら、電子制御のように毛細管現象
おこし、コンピューターを破壊する可能性だって
あるわけだ。
ただし211はオイルパン自体も浅くなってるし
どうやらバルブボディも、オフセットしてる。
比べるとあきらかに設計ミス、というよりは欠陥。
たぶん直らない。壊れるし直しようがない。
平たくいうと東西ドイツが統一してからはなにも
みるべきものがないということだ。1000万を
超えても、使い捨てるような車しか作ってない。
それが「高級」だったのだ。
きっとあちらでも会社の長が、2年ごとに新車を
入れ替えるような愚行を、続けてきたに違いない。