コーポレート・ファシズムの原風景

今年は春が遅かったせいか、夏至を控えた青空は
ただ高く、雲は陰深いのに、地上はところどころ
若草色が残り、まるでこのへんがまだ温暖化する
はるか以前、70年代の雑誌ノンノやアンアンの
グラビアで見たままのソフトフォーカスな諧調で
斧断ちの森は広がってる。
ひと月ぶりに東京を離れ、またここへやってきた
のだった。



2年まえに見た渋谷のひとたちは、怯えてた。
あきらかに皆、他人を視界に入れまいとしてた。
突然ランダムに襲ってくるかもしれない災厄から
目をそらすように、雑踏を進んでた。
今と比べればずいぶん余裕があったはずなのだ。
でも世の中はどうにもこれ以上、広がってく余地
ないみたいだった。うかつに声などかけようもの
なら、ぴしゃりとはねつけられかねない。
うすら寒さがもう、どこかにあった。



1年まえに見た人々は、先祖がえりしてた。
道ゆくのは、人情本のページからタイムスクープ
ハンティングしてきたような足運びだった。よく
「人間は行きづまると保守化する(振子の原理)」
と言うが、そんなレベルでは到底、済まされない
何かが身に染みてた。怠惰で刹那的になってた。
「お金がないんだったら、印刷したらいいだろ。
もっと色々と買えるし(物価が上がれば)借金も
なくなるし」
結構な話を聞かされたりしたのがこのころだった。
彼氏逢いたさに町に火を放つような単略さ。



もう贋金づくりは対抗文化、現代芸術、体制転覆
ではなく、だれがカラーコピー機を持ってるか?
でしかない。
大相撲で懸賞金と賭博とを混同するようなものだ。
力士や親方たちがあれほど不利な賭け(勝っても
胴元が手数料を10%徴収)にハマるのは、要は
自分が永谷園になったつもりでいれるからである。



弟子をリンチしたり、反社会勢力と繋がってたり
都合の悪いことを内緒にしてたりするのは、公益
法人として、いかがなものか。
文部科学省の役人は、そんな因縁をつけてた。
相撲協会のような戦闘集団が、共同体のなかでは
秘密結社の機能をもつ(祭祀をつかさどる。特に
暴力を見世物にすることによって民衆を死の恐怖
から解放する。この1時てきな忘却こそが先祖霊
死者を昇華し、過去を創り、明日こそ明るいから
豊かになれるに違いないと錯覚させる。それゆえ
内緒にしとかなくてはいけない秘密が沢山ある)
とは、よく言われる話。



問題は、公益法人こそが秘密結社になってきては
いまいか、という点である。日本だけではない。
世界中がそうなのだ。
アメリカでは大統領が今回の原油流出を同時多発
テロになぞらえ、事態の深刻さを執務室から直接
国民へ訴えたのだという。
なんとまあ楽観的な。
あちらと違い(注・陰謀ろんでなければ)これは
事故とはいえ、フレンドリーファイアーと同じ。
この会社の1ばんのお得意様は、合衆国の軍隊。
合衆国軍隊はこの会社から最も大量に石油を購入。



対テロ戦争における兵站、最前線から1ばん遠い
海の底深くが、自爆してる。
アメリカやイギリスのブログをあちこち探したが
どこもそこまでは書いてなかった。
というのも、みんな暗合にひそかに怯えてるから。
1説ではもはや打つ手はなく、流出をとめるには
原爆の高熱で、地形を溶かし変えるしかないとも。
唯一の(戦争での)核使用国が自らにいかづちを
落とす羽目にでもなれば、これほどの悲劇はない。
歴史的に見れば100ねん近くさかのぼってその
あいだの(勝ってたはずの)戦争も負けだろうし
そもそもこのグラウンドゼロは彗星が大爆発して
巨大さを誇ってた恐竜が滅亡した原因になったと
まで、言われてるとこなのだ。



人々が畏れてきた魔神とは記憶外の祖霊、太古の
生き残り、その形象である。古くはファーゾル
ファフナー兄弟のように、怪物に変身する巨人族
(リボ払いで商業モールを建て続ける『建築王』に
貸し倒れる)だったり、高度成長期にはロボット
戦闘アニメ(パイルダーオン)だったりした。
これは拷問する理想「…すべきではない」という
メッセージが不安な陰を落とし、実体化したもの
だとも言える。



ここでひとつ、仮説をたててみたい。
「文化は役人が旗振る段階では既にピークアウト」
コンテンツの輸出がどうの…と昨今かしましいが
実はグローバリズムの根底、最も卑俗な情操面に
巨大な影響を与えてるのは日本の子供向け文化で
その流れは、ほぼリアルタイムにシンクロしてる
(映画「真夜中のカウボーイ」)のだとしたら?
世界は単なるクソゲーにすぎない。



あの石油会社CEOは、公聴会でものらりくらり
週末はヨット遊び。インタビューでは
「オレの人生を返してくれよ」
と言ってのけた。
ふりかえってみるとわが国ではこの手の公益法人
企業のトップ、自治体の首長による失言(オレは
寝てないんだ!)に事欠かない。
でも、それを無責任と非難しても仕方ない。



菅直人総理は内閣を、「奇兵隊」と称してる。
これを、ミリシア民兵)と例えるのが言い過ぎ
だとしても、ざっくり説明するなら内戦下の武装
勢力(陰の実力者?はラディン師のようにビデオ
メッセージで登場)と変わらない。
なによりも重要なのは、姿勢表明演説の
「サラリーマンの息子」
であろう。悪の凡庸さ。に関していうなら自分を
サラリーマンだと思ってる総統のほうが、自分を
総統だと思ってるサラリーマンよりも深刻なのだ。



1億総「無責任時代」は、この6月に完成した。
カフカは官僚社会の悪夢について書いたが、この
サラリーマン世界は輪をかけて自滅てきといえる。
法人は決して巨大な城でなく、むしろ血に飢えた
雲霞が何万匹も集まった人型であり、彼らは常に
互いを人格をもつ敵とみなし戦ってる。



「私はね、寝てないんだよ」

「オレは人生を取り戻したいだけなんだ!」
も、運悪く魔神の操縦を任されたメンヘルニュー
タイプの少年兵が、マシンと自らのシンクロ率の
低さを、必死に訴えてるだけなのだ。