ア・ディ・イン・ザ・ライフ

ケーブルTVを眺めてたら、ニュース解説番組に
IT長者がでてきたのだった。
曰く、次のビジネスチャンスは宇宙開発にあり。
宇宙旅行を民間ベースで採算にのせるのは無問題。
ついてはこのロケットエンジンの動画をご覧あれ。
太陽クラスの星でも重力で時空は曲がる。
ワープ航法も原理的には決して夢ではないのだ。
「もちろん宇宙人はいますよ。もしかしたらもう
地球にきてるかも。我々に見えないだけで」



NHK朝の連続ドラマが、ひさびさに人気なのだ。
この時間帯は本来、国策プロパガンダ枠である。
民主化政策における女性の社会参加を訴えるのが
目的であった。
それ故の女性のサクセスストーリー(例・おしん
であり出勤時の朝8:15、昼食後の12:45
なのである。
旦那を送り出して1回、昼寝(または昼メロ)の
前に1ど視聴するとキクように、できてるのだ。



でも今やってる漫画家女房苦労話は、連ドラでは
なく大河(例・内助の功篤姫」)の文法だ。
我々の祖先に首狩族の夫婦がいて、連中がいかに
野蛮な抗争をくりかえしてたか。
という話をこれまでは週に1ぺん、明日からまた
つらいお勤めの始まる憂鬱な日曜の晩に見てれば
気が収まってたのだが、もう毎朝ふりかえらねば
生きてく勇気など、出やしないのだ。
そのくらい疲弊してしまってる。
かように世の中は換わってった。



海のかなたアメリカでは、時代精神を反映してる
と好評だったドラマが2つ、最終回をむかえた。
何年もかけテロリストが計画した国家転覆の試み。
たった1日でみごと解決する公務員たち。
ただし拷問人権蹂躙裏切りその他なんでもあり。
この1日を半年かけリアルタイムでふりかえって
みましょう。1ばん運の悪いのはだれ?
というのがひとつ。



奇跡的に生き残った墜落した飛行機の乗客たちが
デカメロンみたく思い出話をくりひろげる。
そこは南洋の無人島。しかし「青い珊瑚礁」とは
逆に、みんな1刻もはやく家に帰りたいのだ。
フロンティアスピリット、開拓精神の欠片もない。
起業ぐらいしたらどうなのよ。
今だったら「そんなに無理してアメリカに戻って
どうすんの。なんにもいいことないよ。しばらく
のんびりしてたら?」
ツッコまれてしまい、成立しないだろう。
もうひとつは、そんなドラマ。
すっかり、どちらも時代おくれ。



IT長者の話で感心したのは、そのパワーズオブ
テンぽい、常識を拡大したスケール観だった。
月は確かに衛星だ(アポロは特撮説はあるけど)。
観測の範囲では、太陽や木星も物体。ならきっと
銀河のどこかに…
ただ単にはなしがデカい。というのなら、例えば
この世は全て俺の脳内の想像物。世界は俺中心。
てのだって、原理的には十分に可能なはずだ。
でもそれを他人に打ち明けて、どう思われるかは
別問題。



ほんとにそうだろうか?



さきごろ辞意を表明したあの総理夫人は、実際に
UFOに搭乗し、宇宙人と面談してるのである。
少なくとも、そういう話になってる。
仮に時空を曲げるスーパーテクノな超賢い叡智の
宇宙人がこっそり、そのへんの3丁目にきてたと
しよう。彼(宇宙人A)は、誰に最初に挨拶する
だろうか?
もしかしたらそれは、南米ペルーの高原の貧しく
名もない村の羊飼いの少年かもしれない。
そして人類の未来にかかわる重大なメッセージを
のこすのである。
もっとラインが直だとしたら、オバマ大統領とか
ダボス会議の賢人だれそれ。というのもありかも。
でもくだんの少年に比べたら可能性は薄いはずだ。
鳩山の嫁をみてればわかる。いくら友愛だからと
いっても、100人いたらうち1人も、例の話を
本気で信じてやしないのだから。



もし宇宙人が何かを授けるとしたなら、この広い
地球の人口70億のうち、1番それにそぐわない
言葉をかえていうなら、第3種接近遭遇しそうに
ない代表が、あのIT長者なのである。
「じつはボク、昨日、宇宙人に…」
そう告った瞬間、もうアイスも買いにいけないに
違いない。
最も可能性が低いがゆえに、いかにしてでも自ら
率先して、宇宙を目指さねばならない。
なんと人間とは悲しく、皮肉な存在なのだろう。



開拓精神と接近遭遇はごちゃまぜにしないほうが
いいんじゃないか?と思う。もはやフロンティア
スピリッツなんてだれも信じてないのだし。
帰るべきとこもあのありさまなんだから。