デジタルばん2007年この1冊

社会がシャッフルされる時、人は常に善悪、自由
そして意志を問い直す。これらは組合せの問題だ。
果たして善意をもって悪をなす自由がありうるか。
構造から倫理へアプローチするのが、ピカレスク
ロマンである。
「ジュリエット或は悪徳の栄え
を見ればわかるように、作者は彼女を悪人として
描いてはいない。悪徳が栄えるのは構造そのもの
この場合では
「自然」
である。
サドにおける自然は、カントの普遍と同じ虚構だ。
しかし、自然が反復であるという1点においては
より誠実な、必然てき要請でもある。なぜならば
ピカレスクロマンに特有の、一連のエピソードが
レインボーマンというよりはウルトラマンみたく
単発のままつながり、全体を通して何の転回点も
なく、登場人物たちが反省も成長もしないという
構造こそが、自由こそ悪であり、誰もが自分こそ
諸悪の根源なのだと得心させるから。
劇に対立するかたちで始まった散文、特に小説は
カタルシスの効能について、懐疑てきだったのだ。



今こそじっくり読みたいこの1冊
2007年どは
「全国20000室ホテル展開を目指す 続・私が
社長です。APAホテル社長 元谷芙美子の幸せ
開運術! 夢を叶えるフミコ流『ウルトラ常識』
私の勉強運で早稲田大学大学院合格!! 7つの
開運ストラップ APAホテルフロントにて限定
販売!」
これは、グリーンスパン前議長大ファンの日本版
アイン・ランドのようなものである。
よりクロニクルで自叙伝に近い前作
「私が社長です。ホテル10000室展開を目指す
アパホテル社長の天真爛漫人生」
は念願の、世界へ繋がる東京は西麻布にホテルを
建てたとこで終わってた。本作品の構造のほうが
仮に計算書がイカサマで震度3に耐えれなくても
ホンネを引き出すことに成功してる。
104ページより抜粋
「その通りや。そうやけど、アメリカではなぁ・・
不動産の『証券化』いう方法があるんや」
「保証人にならなくてもお金が借りれるてコト?」
「そうや! えらくサエとるやないか!」
(古い友人のユダヤ人から貰ったパンフレットを
前にした夫婦の会話)
あとがきによると、早稲田大学の看板教授からは
「起承転結の展開であるべきですが、元谷さんは
その展開になってないですよね」
Disられたらしいが、僻目というものだろう。
この反復のなかで、作者は
「プラス思考でポジティブシンキング、前むき」
「人や物のせいにしない。自己責任」
そして
「なにごとにも期限を設ける」
空間構造を鑑みると不可能ではないかと常人なら
疑ってしまう3つの考案を
「幸福の秘訣」
と紹介、さらには自身も私は幸せよ。と高らかに
宣言してるのである。
不幸自慢や自虐ばかりが目立つ昨今、いい度胸だ。
証券化の観点からしてもアマゾンのマケプレでは
現在、底値なので絶好の買いどき。
新自由という名の、いささか耳なれない概念とは
いったいなんだったのか。特にその
「ネオ」
の部分について、年末まで熟考せねばならない。
正に旬の1冊といえよう。