永遠の嘘をついてくれ

録画しといた
未来の想い出 LAST CHRISTMAS」
見る(シネ・ラバンバ)。
ネットでの評判は散々だが、90年代の邦画では
1番、しっかりできてる。
不評な理由
1)原作とぜんぜんちがう
2)「リプレイ」とかのパクリ疑惑
3)役者が大根
など。
しかし原作者本人がカメオ出演してるのに違うも
なにも。
それに、これは「スターシップ・トゥルーパー」
みたいなもんなのだ。
バブル当時のメンタリティを探るのに、こんなに
適した作品もない。
「バブルへGO」の100倍、描写は正確である。



インフラ感

比較すると現在の日本は、北朝鮮なみに貧困だ。
主人公は売れない漫画家、又は見習いの身なのに
接待ゴルフは行くし、原稿はタクシーで持ちこむ。
なぜこれがリアルかというと、皆がおなじ流行を
おいかけてるから。
「時代が求めてるもの」
という、形而上的な雲をつかむようにあいまいな
概念を実体化するのが−というより全員それしか
考えてない。
オリジナリティが…みたく難しい話を誰もしない。
宝さがしのようにヒットするもの、どこかにある
はずの正解答を求めて、自分を型にはめてくのが
自己実現とされてる。
ほんの数分違いで、ライバルがそっくりな作品を
持ちこんでくるほどに、ベクトルが等しい。
ここまで日本が1丸となってる代償は当然ながら
「だれかのために、だれかが犠牲になる」
他人が売れたからわたしが売れなくなってしまう
チェリーパイのような、ディストピアである。
よって、未来を知ってる方が圧倒的に有利だ。
そのスピード感たるや凄まじく、2年まえの回想
シーンで流れるニュース動画が、モノクローム
映しだされるほど。それを
「与えられた条件を積極的に生きる」
楽しまないと損。とイデオロギーでもって強引に
解釈し、きりぬけんとする。ちなみに
「WINWIN」
だの
「新しい価値の創造」
だの最近では声高に言ってるが、どれほど気休め
なのかは不明である。



恋愛

よって数人が集まると、すぐに未来を語りあう。
携帯もなく、人間関係ネットワークがあくまでも
しごとベース。広い意味でぜんぶオフィス・ラブ。
「キミの人生観が知りたいな。」
「あなた、部屋きれい?」
がラブ・トーク。すなわち利害が一致する相手と
お互いを高めあうのが当たり前な、国家社会主義
そこにまるで異物のように侵入してくるのが当時
弱冠18の和泉元彌そのひとである。



狂言とは模倣芸能であるからして、元彌はまんま
主人公のうつし鏡といってよい。
(競馬で1点買い的中・「貴女とはまたどこかで
逢いますよ」と根拠なく気合で未来予測)
WIKIにあるように清水美砂工藤静香は都合
2ど人生をやりなおすのだが、最初の事故だけが
現実で、ライフ2は煉獄。元彌は幻想空間の王様
尊師いわんとするとこの、マーラ役を務めてるが
ゆえに、あれほど棒読みなのだ。
ライフ3、化楽天において彼が開示する真理が
「時代についてくのか、時代がついてくるのか」
からも、明らかである。
元ネタとされた作品群が、神曲的サブルーチンで
括られてるだけなのに対し、こちらは仏教宇宙を
描いてるとも解釈でき、上記2)が不十分な読解
だとわかる。



みどころ

元彌は、日本文化のすばらしさを伝えにパリへ。
クリスマス・イブ、美砂に逢いたい一心で成田を
めざす元彌。すでにホテルはチェック・アウト済。
そんな彼となんとかして連絡をとらんと、静香は
「ドゴール空港にでんわして呼びだしてもらう!」
叫ぶのだ。
今だったらGSMへかければすむのに。という話
なのだが、こっちのほうが「大きな物語」である。
ハナシがでかい。というかさすがバブル。世界は
東京を中心にまわってるのだ。
ありがちな、パリのインサート・ショットもなく
747ですら、シルエットでしか登場しない。
いわゆるひとつの
セカイ系
とはバブルの遺産。東京の土地とアメリカ全土が
等価となってしまったほど、セカイの中心が東京
と叫べたあの瞬間がのちに内面化され、病として
噴出した現象なのだと、的確に示してるのである。