虫の穴

選挙結果をうけて、政党の広報担当が
「改革の本質でなく『政治と金』や『年金』等が
争点となってしまった」
コメントしてた。
論理回路は健全だったのに演算でミスりました」
て弁解してる、HAL9000みたいだった。
オウムっぽいとも感じた。
「教義そのものは問題なかったが、施行面が…」
ことのはに言わせると、それが真理らしいのだ。
かねがね日本人の相当数が、かくれオウム信者
と主張を展開してるわたしとしては、別に驚きは
ないのだけれど。



「だから原子炉が、自動停止したじゃないですか。
冷静にみきわめましょうよ。国の未来」
そう主張してる輩も、わたしは一如だと思う。
このひとたちの話によると、とかく大衆とは無知
ゆえに不安や、恐怖ばかりが先にたつ。
セリエAが来日を取りやめたのも、あっちが過剰
反応してるから。そもそもブルームバーグ
「原子炉に穴があきました」
誤報さえ、うたなければ…
つまりわれわれは不当にそしられてる。のだと。
外務省なりサッカー協会は、迅速に対応すべきで
あったが、それはそれ。



だがこれが仮に誤報だとしたら、かなりスケール
メリット大、普通の常識ではちょっと許されない
間違いではないだろうか。
「世界破滅!チャイナシンドローム!」
ふくらまして打電してしまったナイスガイがいる。
ブルームバーグにしろワシントン・ポストにしろ
いちおうジャーナリストだ。
彼らの判断をつい狂わせてしまうような、異常な
なにかが、この一連の事件、どこかにあったのだ。
いかなるたぐいの「放射能」が、外国人記者達の
脳内に、怪電波となって到達したのだろう?



わたしが、何人かに訊かれたかぎりでは、彼らの
印象、とくに原発から煙がたちのぼってる絵姿は
「形容しがたいほど、とても気味のわるい」
ものだったという。
要はビジュアルだけ、いきなり見せられてるから
そう感じるのだ。われわれは事前に、いろいろと
予備知識をデータベース化してる。だから
補助金でてるはずなのに、町役場しょぼくね?」
ある程度、ゆったり構えてられる。
情報格差なのだ。



そこでわたしも、説明した。
太陽を盗んだ男」って映画があって、登場人物
みんなマルジェラ着てるみたいで、だいたいその
ころできた発電所だということ。うっかり浜辺を
歩いてると、目隠しされて、ボートにのせられて
25年くらい帰ってこれないこと。おかげで町は
マイケルムーアみたく因果応報、ちょっといい女
みかけたら自宅の2階に、だいたい10年くらい
鎖につないで、飼っとける自由さに溢れてること。
ここじゃないんだけどプルトニウム再処理してる
とこは、死後の世界への入り口ちかくに建ってる
ことなどなど。



ふりかえってみれば、ほんのひとつき前までは
「猛暑だったら経済効果数兆円!第3のビール
新型エアコン!」
とか、クローズアップ現代で煽ってた。それが
「ほしがりません勝つまでは」
どうやら第2、第3の敗戦てな雰囲気である。
現在ではまるでコメのごとく生産してる、自動車
エンジンの圧縮が全国的にスカスカ、いっせいに
ラインが止まってしまうという、ヴォガネットの
小説みたいな展開になったのもまいった。
しかしこないだの地震では、たしか
「伝統とは免震でござる。みよこの叡智」
て話になってたはず。いま耳にするのは
「日本家屋は屋根が重い」
からしょうがないですよ。と手のひらがえし。



それもそのはず。
倒れてる家屋のほとんどが、渡辺篤史というより
リフォームの匠が、むこうから歩いてくるような
造りなのだから。
やれ格差が金だの情報だの気持ちの問題だの。と
抽象的な議論にかまけてる連中の誰ひとりとして
遠慮してか、あえて眼をつぶってるのか知らんが
言いださないのが、不思議でならない。
わたしは
「ハリケーンカトリーナみたいな災害がきたな」
と感じた。とくに米軍がデータ収集にきたとき。



原発そのものは、わたしも大丈夫だと思う。
でも人間が耐用年数を超えてしまってる。ひとの
こころに穴があいてしまってる。という可能性も
考えておいたほうがいいのではないか。



どんな辞書を、どれほどめくっても、この自分の
気持ちをぴったりあらわす言葉が、みつからない
恋の瞬間がままあるように、わたしは人間という
ものは基本的に、貧しいのではないか?と疑って
ばかりいる。



あの「しょうがなかった」原爆とは、物質が物質
でなくなる刹那、放出されるエネルギーのことだ。



生きてることの無意味さに直面したとき、言葉を
うしなわないひとも、稀だろう。
だれかをして
「あいちまったよ穴が…原発に」
と、叫ばざるをえなかった。
それ以外、形容のしようのない現実が、たしかに
あったのだと、忘れずにいたいと思う。