有名病

うわさにたがわず、Kは有名病だ。
宣材の、どの写真を見ても、だれがモデルくずれ
かはすぐさま分かるというのに、のこりはすべて
昼間はOLさんの、アルバイトにしか思えないと
いうのだから。
「いやぁ。。それでも大半のしっかりしたウチの
娘さんは、あいかわらず真面目なんだと思うよ。
昔とかわんないって。そういう割合は」
煽ってみると
「おめぇによぅ、そんな言われるなんて…」
ご立腹である。
「そりゃわたしもね、どっちのがはたして、よい
世の中なのか、はかりかねてるとこはありますよ。
でもね、信じてればなんとやら、ってのもあるん
だし。ほらイタリアのこなんか、イキそうになる
と昔の(らしき)男の名前を、思いつくがままに
耳元で、ささやいてくれるって話ではないですか」



有名病は、時代のペストである。
ソレルス
「存在するとは、人々の話題に上るということだ。
マスコミは、かつての宮廷なのだ」
そう書いてる。
だから有名になりたいという気持ちはわからない
でもない。
そのためのチョイスとしては、バスジャックから
ノーベル賞まで、多岐にわたる。
しかしダイナマイトだって、人殺しの道具だし。
どこにモラルで線をひくかは、砂浜を海と陸とに
わかつようなもの。
どこかで無理をしてしまうのか、それとも何かが
オリのように溜まってくのか、ある日すっと人気
というかカリスマ、輝きがうせてしまうのを目撃
する。



というか、どっかが決定的に、ズレたように感じ
られて、まわりはみな、おそろしくなるのだ。
とてつもない物に、ふれてしまった気がするのだ
と思う。
たとえば私には、こんな2面がある。
A)ブック1st帰りにラムタラよってムフフな
DVDをこっそりチェック
B)こらこら、そこにゴミすてちゃいけないよ
有名病とはすなわち後者、わたしのこころの中で
社会という集合とのまじわりを、クリティカルに
ヒットしてくるので、かかった本人からしてみれ
ば社会が、病んでるようにしか映らないのである。



たいていの場合、最も平凡な社会常識(例・CA
が夜のフライトをお手伝い。聖職者にご奉仕する
少女たち。丸の内OL100人に聞きました)が
侵される。
「このDVD『熟女』って書いたるのに、なんで
俺より年下なんだ?」
そんな素朴な疑問を抱けなくなったら、わたしも
いさぎよく、引退しようと考えてる。
しかしそればかりではない。
自我(A)は、崩壊してく社会を、なんとか立て
直そうと必死になる。
うらぎられた想いが彼を、よけい依怙地にさせる。
急に地位だの名誉だの実績だの伝統だのと、言い
だすようになる。
ひらたくいうと、ひけらかすようになるのである。



最終的にどうなるかというと、ちょうどこの時間
放映してる、大河ドラマみたいになる。
頭にバカ殿のカツラをのせて、酒場でだれ彼とも
なく捕まえては
「名をなのれ」
みたいなセリフを叫んでまわる。
アフィリエィトで食ってけないかみたいなことを
画策しだすのも、だいたいこの時期といってよい。
権威にすがってるのに気がついてないのは、本人
だけなのに。



おそらくは
「注目を集めてたい…」
という、素朴なあこがれにも似た感情が
「まわりすべてが、自分に関心があるように思う。
できごとが次々とつながってしまい、まるで己が
天才のように感じられる」
のような、電波と称される心理状態と、それほど
かわらない構造を持ってるからだろう。



わたしには、沖縄戦の自決を、軍が命令しただの
なんだのという問題も、同じに見える。
地位のある軍曹さんが社会をよくしようとやった
と訴えてるのだからそれは真実なのだし、かたや
ブサヨのいち農民が訴えてるのは金めあてに違い
ないわけだ。
この官僚どもは、歴史をいじってるくせに自らが
歴史の主体であるという意識が欠けてる。
「戦後しばらくは兵隊が手榴弾をわたし、方法を
具体的に指示してた。と記述されてたが、今世紀
初頭になって『強制されたんだったら、自決とは
いわないよね』運のわるいやつがたまたま現場に
居合わせた自己責任と、認識が変化した。それを
省庁で指導したのはXXXX、XXXX等、数名
である」
そう2020年の歴史本に書かれないよう、注意
したほうが賢明だと思う。