いじめ。村八分

プロデューサーのHさんから電話が、かかってきた。
「あのさぁ、おまえ。おれすっげえミュージシャン
みっけちゃってさ」
きくとその人は、だれでも名前を出せば知ってる
Nというテーマパークの、御曹司なのだという。
もちろんHさんのことだから、ジャンルはロックに
きまってる。
「いやぁ。。こっちじゃ、なかなか知られてないす
けど、ジャミロクワイもクラ・シェイカーも最初は
さんざんバカ扱いされてましたからねぇ。ちょっと
むつかしくないすか?」
「バカやろう。そいつは自分の金でロンドンいって
レコーディングすましてきたばっかなんだぞ」
「あぁ…すごいってそういうこってすか」

2ヵ月後。
Tくんのコンサート楽屋。ステージ終わったばっか。
なんか叫んでる人がいるな、と思ったらこないだの
テーマパークだった。
こういうツアーに、喧嘩はつきものである。
「Tさぁぁん!黙ってきいてりゃ、最近のアンタの
ギタープレイ、最低じゃないですかぁぁ!」
まあ確かにそうだ。業界ヨリだし。広告カメラマン
尊敬してるとか言いだしてるし。嫁のせい?
しかしロックなんてもう、だれも聞いちゃいないん
だがな。だって自分で演奏してんだよ?
とそこまで、現場にいた20人弱が思いを巡らした
その瞬間、TVでも喧嘩上等で有名なTくんの声が
響いた。
「おまぇぇ!!そんな言うのは10年はええんだ!」

7年がすぎた。
あの日の帰り道、みんなは口々に
「Tくん、やさしいよね」
「10年おそいの間違いじゃねーの?」
と言いあったのである。