汝の隣人

インターネットが社会へ浸透して、専門家という
職業が、まずありえなくなった。
キーワード1つで、なんでも引きだせる。プロと
マチュアの垣根はぼやけ、だれでもだいたいの
ことを、プラスざっくり深くまで知ってなければ
たちゆかなくなったのだ。
もしもこの世界が、100人のAV女優だったら
80人ほどの名前と顔が一致し、そのうち数名の
出演作ほぼ全てを、データベース化できてる感じ
とでも言おうか。
もちろん↑このジャンルが、最もハードルが高い。
楽家や作家、大学教授のバイオグラフィー作成
などとは、比べものにならない困難さが伴うのだ。
そもそもこのフィールドは、平凡な日常記録ゆえ
リリース量が膨大である。
アンダーグラウンドな商品を数えずとも、全体を
正確に網羅、把握してるリファレンスそのものが
第一、存在しえない。
キャリアに沿うようにして、芸名を変更するのは
当たり前だし、同時に複数を使いわけたりもする。
原型を留めないほどの肉体改造も、美徳とされる。
ロンダリングされてるのはアイデンティティだ。
スポットで拾うのは容易なのだが、ひとたび探究
しようと思った瞬間、とてつもない闇が広がる。
かつてモザイクが今ほど小さくなかったころには
「人妻モノ」だったはずが、裏ビデオで流出して
みると実は男だったという、ひとひとりの人生を
左右してしまうような話も、あった。
タイトル「妻の秘密を知る」
モザイクが伝統文化、わが国らしいエピソードだ。
ここまでトラウマでなくとも、企画モノには困惑
させられる。
人間の性は、盆栽のような人工の構築物。つまり
膨らましたGカップみたいなもんだから。
例えば新宿の、某マニアむけビデオショップには
水着やメガネなど定番セレクションに加え、レジ
横には、たまごクラブひよこクラブこっこクラブ
3誌が、平積みの背くらべをしてる。
とはいうものの、他人事ほど、虚しい話もない。
先日、大手レーベルからメジャー・デビューした
娘さん(清純派)が過去、野外露出モノに10本弱
出演してる事実をつかんだのだ。
これは大好評といってよい。
私見だが、間違いなく本人もNGでないばかりか
まんざらでもなさそうな(天職?)雰囲気なのだ。
野外露出であるからしてあくまでも、よく駅前や
通勤電車内で人間本来のすがたを群集に見せつけ
ゲリラてきに解放を訴え、すっきりしてる人たち
(いわゆる逮捕も覚悟してる確信犯)とは違う。
とはいうものの、純粋な自然なるものが、幻想の
産物であることも、これまた確かである。
彼女にむかって
「自己顕示欲がつよいんじゃないの?」
と指摘するのは、どうやら的ハズレみたいなのだ。